誰も休めないのは誰のためにもならないと思う理由
自分だけ休んで迷惑をかけると申し訳ない。同僚のことを考えていない人の代わりなどしたくない。とりあえず休むなよ。これが休めない職場の典型例です。上司はコンプライアンス上、休めと言います。しかし同僚の相互監視が働いて自主規制せざるを得ない状況こそが休暇取得の一番の問題であることを認識する必要があります。
- 作者: ピーター・F・ドラッカー,上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2001/12/14
- メディア: 単行本
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1 休めない状況を維持するリスク
突然の受注の急増や欠勤に耐えられないような職場は、社内コンプライアンス上だけでなく、社外に対しても信頼を失う要因になります。仕事が継続的にオーバーロードしている状態を放置して、原因を個人の努力に帰着させ、現場だけに責任を転嫁しつづけるような考え方は、必ず破綻します。責任感の醸成という意味で現場を一時的には鍛えられるものの、精神の異常、上司への信頼の喪失、下克上、分離独立の可能性等、組織の内部から崩壊する要因にもなるからです。
2 休めない状況は競争力が低い
「休まず働くことこそは、競争を維持するために必要だ。」という人もいますがそれは大きな誤解です。パーキンソンの法則(複雑さと重要性は、割り当てた時間の長さに比例する)にも在るとおり、やらなくても良い仕事を増刷し、非効率、非生産性を生み出すことにつながります。融通の利かない非効率な職場を生み出す結果にしかなりません。費やした労力(投資)に対する得られた成果(利益)は必ずイコール異常でなければ、競争力など維持向上できるはずもありません。
3 考え方が変えるだけで誰でも休むことはできる
自ら好んで、休まずに働くというのは自由ですが、それを他人に押し付けてしまっては、休めない我慢レースが始まり、無意味なデスマーチにしかなりません。労苦を共有してほしいと思う気持ちは、無言の『悪意』となって職場の雰囲気を悪くするだけです。個人の強い責任感と労働哲学に頼るのではなく、マネジメントを適切にして共存共栄の「お互い様」思想を導入し、組織として柔軟性のある体制を構築することこそが労働力の費用対効果を最大化す方法なのです。
正しい組織構造が成果をあげることを約束するわけではない。
しかし間違った構造は成果をあげられないことを約束する。
P.F.ドラッカー