世界の食糧問題を解決する野菜工場の可能性
野菜工場は、いままでの農業のあり方を根本的に変えようとしています。露地栽培とは違い、野菜工場は密閉施設で天候の影響を受けません。決まった生産サイクルで生産される野菜は、年間を通して安定した生産とコストで食料事情を支えることができます。また、衛生的な工場内はそのものがクリーンな環境のため、農薬を使う必要がありませんし、温度、湿度、光、肥料など適切に管理することで通常の育成よりも数倍早く収穫することができるものもあります。高い可能性を秘めた工場野菜は今後の食料問題にも大きく影響することは間違いありません。
- 作者: 池田英男
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2010/03/20
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1 既存農業はギャンブル性が高い
既存の農業は天候により収穫量は大きく左右されます。ですから、収穫は市場での価格変動のリスクを常に受けてしまい豊作貧乏も大いにありえるのです。価格を維持させるために廃棄したり、規格外についても有効利用するコストが馬鹿にならず、これも廃棄に繋がっていたりします。しかも、繁閑期の差が激しく恒常的な人的コストを賄うことができない現状があります。露地栽培の『大地の恵』とか『太陽の恵』といった何となく良さそうな言葉の裏では、常に自然とのギャンブルをしている農家がいることを忘れてはなりません。
2 安定化するためのコスト
農業関係者もそんな不安定な生産環境に手をこまねいていたわけではありません。兼業農家や小規模で行うことでその不安定なリスク分散してきましたし、石油で作った化学肥料をまき、化石燃料をガンガン燃やしてハウス栽培をし、長期保存のために大量の電気を使って冷蔵倉庫管理し、人件費削減のための外国人研修者を雇ったり、そして自然の野菜とはかけ離れた品種改良、挙句には遺伝子組み換え等と四方八方考えてきたのです。しかも、少しでも高く売るために、地方で作った作物を何百キロにも渡って空輸や陸送で大量の化石燃料を使って都市に運んでいるのです。残念ながら、これが今の農業です。はたして、このような農業のあり方こそが『理想の農業』といえるのでしょうか。
3 時代の変化が農業を変える
根本的な安定化に向けての取り組みは、集約化、組織化されなければ為されることはありません。高い生産力を持つシステムとして機能させるためには、バラバラに生産していたのではムリムダムラを拡大させるばかりです。広大な大地をGPS等を駆使してシステム化された欧米の農産物や、格安の人件費を駆使したアジア農産物の前にして、TPPで市場開放されれば、大きな波に飲み込まれるのは目に見えています。価格競争に巻き込まれて農業族議員からの補助金でヒモ付けされて、ますます自由と競争力を失う農業に未来はあるのでしょうか。
4 未来は野菜工場から作られる
世界史は人口を支える『農業』は土地、気候、労働という要素に左右されてきました。いまだエネルギーや水の課題は残りますが、生産地の縛りが無くなるだけでも大きな前進です。砂漠、極寒地、荒廃した土地で高品質の食料品が生産できれば、世界地図は大きく塗り替えられます。異常気象、温暖化、世界人口増加などで食糧事情は厳しくなると予想される時代です。あわせて少子高齢化を迎え、高齢化により農業人口も減る一方です。無農薬、有機栽培、長期保存、都市生産、安定供給への対応もできる野菜工場は今後の農業の切り札になります。私たちに残された選択肢はそう多くありません。農工業『野菜工場』の挑戦を加速させるために、私達にできることはなにより「商品を買う」ことです。宇宙生活への未来の展望も考えて今から「投資」する価値は十分にあると思うのは私だけでしょうか。
この世界から足を洗ったら、農業をやりたい
鳩山由紀夫
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