スパルタ式教育法の功罪
誰も助けてくれない環境で、どうにかせざるを得ない状況を作り出し、ギリギリまで追い込む。そのような場合において生き物は2つの選択肢を選ぶことになります。全てを捨てて降参して諦めるか、潜在能力を最大限に引き出して立ち向かうかです。特に目標や護るべきものある場合においては、逆境は成長に強く作用します。ある意味で生体反応を利用した教育法は、スパルタ式教育法と呼ばれ、昔からあらゆる場面で利用されてきました。この方式は比較的簡単に成果が出ることが広く知られています。しかし、スパルタ式には功罪があることを忘れてはなりません。
- 作者: 岩本浩治
- 出版社/メーカー: 商業界
- 発売日: 2009/05/09
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1 スパルタ式教育法の罪
- 1 制御が難しい
スパルタ式教育法には『型』が必要です。追い込んでいくためにはそれなりの型がなければ、爆発する先がどこに行くか分かりません。走り出すまでにムチを振り続けなければなりませんし、一度走り出したら走り出したで、少しでも気を緩めれば危険極まりない方向であっても突っ込んでしまいます。勢いがあればあるほど、修正するのも、歯止めをかけるのも難しいのです。
- 2 感じなくなる
苦しみや痛みを感じるのは「生き残る」ための生体反応です。不断な、この生体反応によって身体の危険を感じるようにしているのですが、あまりに過重な負荷をかけられるとこの生体反応が効かなくなります。これは、脳に対する危険信号が一定の水準を超えるとこれ以上、生体反応を出しても意味が無いと判断してリミッターを解除するからです。そのリミッターが外され続ければ危機に関しても「鈍感」になるのです。
2 スパルタが滅んだ理由
恐怖心を持たず、焦りもしないのは戦う上で必要なことですが、裏を返せば危機的な状況に陥ったときにそれを危機と認識できない恐れがあります。勇猛果敢な突撃を繰り返す軍隊には理屈など必要ありません。むしろ『しごきまくればモノになる』という考え方には理屈などは邪魔でしかありません。合理的な判断を軽視しても問題視されず、不条理なことでも、すべて「努力、根性、気合が足りない」で片付けられてしまえれば最強の軍隊であっても滅びるのは目に見えています。
3 真のスパルタ式教育法は指導者にとって厳しいもの
スパルタ式教育法には、常に主従、命令服従、上下関係がつきまといますので指導者とって都合の良いものになりがちです。しかし、少しでも怠慢を認めればすぐに暴走をし始め、ムリムダムラを生み、崩壊に向かうことを認識しなければなりません。どんなに厳しい状況においても冷静に理論を立てて合理に物事を進めていく発想を持ち、不条理な状況でも条理を組み込んでいく、そんな思考をもっていない人には、スパルタ式教育法を使う資格は無いのだと思います。
逆境に勝る教育はない。
ベンジャミン・ディズレーリ