できるだけ早く決断するために知っておくべきこと
世の中には沢山の情報が溢れています。検索すればたちどころに欲しい情報が手に入る時代ですから、質の高い情報を手に入れることもさほど困難なことはありません。しかし、いくら卓越した情報収集能力を持っていたところで、その情報を使いこなすことができなければ意味がありません。何かを決める際に重要なものは何かと聞くと誰もが「情報」と答えますが、その「情報」が本当に『判断するのに必要な情報』かどうかを考えている人は案外少ないのです。ここに判断の鈍さの原因が潜んでいます。決断できる要素の認識が薄ければ、不要な情報でも集め続けるはめになるのです。
- 作者: 羽生善治
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/07
- メディア: 新書
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1 消化できない情報は集める意味がない
過剰な情報は消化不良を呼び起こします。どのように活用できるかを考えずに、ただひたすら情報を集めたところでそれは判断を鈍らせるものになるだけです。判断に不要な、その他の資料やデータはただの雑音でしかありません。これでもかと持ってこられても情報過多で余計に混乱するだけなのです。特に、迅速な判断を求められるときには、情報収集にかける時間よりも判断にいたる時間の方が優先されます。早く決断するためには、決めるための情報が何かを知っておかなければなりません。それには、まず自分が何を出来るかをまず知っておかなければなりません。自分ができること、できないことを正確に把握した上で、行動を決定するのに必要なもの「だけ」を見ることがすばやい決断にいたるキーポイントなのです。
2 情報よりも把握すべきもの
単純ですが自分が何ができるかを知るためには、多くの事象に当たる事です。どれだけの力で、どれくらいの時間でこなせるかを把握する『見積もり』ができるためには、多くの経験が必要なのです。経験値が増えれば増えるほど事象に対しての適量を知ることが出来るようになります。見積もりが把握できるようになれば莫大な情報から必要な情報だけを絞り込み、迅速な判断をすることができるようになります。莫大な仕事量でも捌いていくことが出来る処理能力は限られているなら、入力できる量さえ知っていれば過不足を調節して最適なスピードを常に保つことができるのです。
3 考えるべきはフロー制御
さらに一歩進んで、処理できると判断した『他人』に問題を渡すこともできます。一人で出来なくても『チーム』を組んで対処することもできるようになれば、より多くの仕事量をこなすことができるようになります。人間一人が実際に出来ることというのは、そんなに多くありません。多くの仕事をこなすためには時間と空間の縛りがあるため、自分以外を活用することが重要になります。他人も自分と同様に一人一人が必要な情報は立場によって質は変わりますが、こなせる量はさほど変わるものではありません。自分以外の人に対しても適量を振り分けることができれば全体としての最適も保つことができます。
4 判断するために情報はある
情報の海に投げ出されて溺れるのはミスをしないがために完璧を求めて手を伸ばしているからに過ぎません。たった一度の判断で戦局を大きく左右するようなものを指し迫られる場面など、そうそうありません。どのような事象でも個別に見ていけば、必要な情報など限られたものです。必要なタイミングで動けず、怖じ気づいたりしてしまうのは持っている情報の不足というより、自分の判断する能力の不足です。判断した後からも、さらに判断はできますし、情報も収集し続けることはできます。足りなくなったら現地調達もできますし、調整は走りながらでもできます。大切なのは情報収集することではなく判断することなのです。
不決断こそ最大の害悪
ルネ・デカルト